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作曲家・編曲家・楽譜浄書家
岡村康太

Chromium for Mandolin Orchestra 解説 音源はコチラ
Chromismとは「多色性」という意味の言葉です。宝石のように角度によって色が変わる現象のことです。
M7コードを中心に書いています。CM7コードは「ドミソシ」の4音から成り立っています。
ドミソはメジャーコード、ミソシはマイナーコードで、聞き方や分解の仕方によって性質が変わります。
そのことについて考えていたところ、この言葉を運よく見つけることができました。
冒頭にfで少しだけのインパクトを与え、Gtのアルペジオが伸びるかのようにマンドリン属の楽器が伸ばします。
3小節目に向けて徐々に音が変わっていきます。
また、2小節目からのGtの音は、Gtの特性であるサスティンを表現するためのものです。

ここから主題が始まります。半音から始まるメロディはM7コードで表現できるとともにフリギア旋法を意識しています。
GtとCbの音符は主題にペダル的効果を狙っています。

Cからは主題の応答部分になります。主題に比べて幾分か長いです。

31小節目からは回数指定のトレモロになります。
通常マンドリンのトレモロは回数指定をしませんが、回数指定をしない理由もないことと、
回数指定することによるグルーヴ感、ピッキングの集合体であるトレモロの再認識を目的としています。
また、MnからMcに向かって音形が移動しているのがわかると思います。
これはオーケストラ全体を音の重心が左右に動くように設計されています。

主題が再登場し、中間部に向けての部分です。
39小節目から橋渡しの役割を行なっているとともに、オルガンのような響きを目的として
音が少しずつ重なるように設計しています。
B-durからd-mollへ向けて1音を変えることですんなりと移動できました。

中間部はGt1,2のアルペジオから始まります。
1も2も別々のコードのアルペジオで複調(ここでは複和音の方が適切な表現かもしれません)に似たものになっています。
また、複リズムによって背景としてだけでなく、落ち着かない雰囲気を出せたと思います。
Gt2は9音でひとかたまりの音形になって、少しずつズレていきます。

47小節目からの16分は緊張感をより高める効果になっています。
また、16分の動きの1オクターブ下でMcが似た動きをしています。ここはヘテロフォニーのように一つの旋律に複数の動きをつけたものです。
48小節目のMn1は39小節と同じくdivしてオルガン効果。

58小節目からMd,Mcに旋律が移動します。
そして徐々にメロディが受け渡されてMn1まで上昇していきます

徐々に調が変わりながら72小節目で再びg-mollに戻ります。
もう一度回数指定トレモロが現れます。
今度はかなり動きのついたものです。

そして中間部の最後の盛り上がりです。ここに一つ反省点があり、この同音連打部分を予知させる場所ががなかったので、そこは構成力不足でした。
音のチョイスはうまくいったと思います。
同音連打が徐々に変化(♭がついていき)、B-durに戻ります。

中間部が終わり、冒頭と同じリズムの部分になります。
冒頭よりもシンプルに、中間部の激しい部分、明確なリズムと相まって、より静かに、リズムを感じないように配慮しました。

後半で再び主題に戻ります。
そして、主題が徐々に重なり対位法的な部分で宝石の乱反射のような表現になりました。

117小節目から終わりに向けて冒頭のGtのサスティン部分が登場します。
Mn1の最高音がレミシラの主題をなぞっています。(画像は修正前です。ゴメンナサイ)

121小節目からレミシの主題3音のみを鳴らしています。
短2度でぶつかっていますが、幾度となく鳴らしてきた主題なのと、短9度ではなく短2度にすることで不協和音感を軽減させ、オクターブで鳴らすことで不協和音に聞こえない配慮をしています。
以上で解説を終わります。
人生で2作目となるマンドリンオーケストラでした。
やってみたかったこと、自分の世界観を表現できたと同時に、もっと構成からしっかりと練ってより完成度の高い様々な仕掛けのある曲にしたかったと言う気持ちもあります。
これからもより良い作品にすべく経験、勉強を重ねていきたいと思います。
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